【誰しも死と踊るもの】
主演娘役のちゃぴこと愛希れいか嬢の素晴らしい退団公演だった。
ちゃぴちゃんの強い瞳が好きだった。凛とした立ち姿が好きだった。甘い笑顔が好きだった。
そんなちゃぴちゃんの良さが全て出た公演だったと思う。
「エリザベート」はとても思い入れがあって、いろんなシシィもトートもフランツも観てきたけれど、その中でもかなり好きな公演でした。
ウィーン版の歌詞で
「誰しも死と踊るもの でも誰もエリザベートには敵わない!」(我ら息絶えし者ども)
「狂ってしまう勇気が出ないの」(精神病院)
というのがあるのだけど、このふたつを思い出すシシィだった。
自分の中の死と向き合い、綱渡りの綱の上でギリギリにバランスを取っているシシィ。
そんな印象を受けた。
「私だけに」を歌う前、聖書に挟まっていた守り刀で自害しようとするシーンの表情に鳥肌が立った。
決意したのではなく、ただそこに刀があったから衝動的に「ここから逃げだそう」と思って手に取ったんだろう、そして刃を見て死を意識して「まだ死ぬわけにはいかない」と思ったんだろう。
その流れが美しく滑らかだった。
ここだけではなく、シーンひとつをとっても物語全体を観てもどこも感情が途切れるところがなく集中して観ることができた。
前公演の「BADDY」と合わせて、ちゃぴちゃんの娘役人生、宝塚人生の集大成としてこれ以上の公演はなかったのではないだろうか!
愛希れいかの底力を観た、そんな公演だった。
そして好きだったのはみやるりのフランツ!
最初に謁見の間で登場した瞬間、軍服に「着られている」ように見えてびっくりした。
歳を重ねるごとに出て来る貫禄、そして「夜のボート」での小さな姿。
みやるりのお芝居は以前からとても好きで、気障な色男から気の小さな青年からなんでもできる人だと思っていたがそれを再確認した。
シシィを見つめる瞳の優しさといったら!
そしてフィナーレでせり上がってきたときの晴れ晴れとした笑顔のかっこよさとかわいさ!
今後もずっと姿を観ていたい生徒さんのひとりです。
れーこちゃんのルキーニも瞳の奥に狂気をたたえ続け、場を巧みに回し続けていた。
たまきちと学年が近いということもあるのかもしれないが、トートとの距離感が近いルキーニだなと感じた。言うなれば「悪友同士」かなと。
たまきちのトートはちゃぴシシィとの共鳴が強かったようにおもう。
シシィの中にいる「死」、イマジナリーフレンドとしてのトートにすごく納得した。
感覚的な話でしかないが、同一性が高かった。
短髪トートにしてくれてもいいじゃん〜とずっと言い続けているが、ロングヘアでシシィとシルエットが近いのも視覚的な効果があったとおもう。
それからヴィンディッシュ嬢のくらげちゃんも素晴らしかった!!扇を交換してシシィの顔を見つめる瞳の戸惑いが胸に刺さった。
公演半ばに一度だけの観劇だった。ルドルフをふたりとも観られなかったのは残念だが、どちらも映像に残っていてくれればとおもう。
(欲を言えばれーこフランツも……)
今とても安定している月組さん。
主演娘役が替わればどう変化するのかが楽しみです。
2018.09.15. 11時公演