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ミュージカル「スリル・ミー」成河×福士ペア(2021)を観たよ

【歪んだ愛情 サイコホラー感の強いペア】

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2019年の衝撃から2年と少し、納得の続投でした。
とにかく成河私のサイコパスみがすごくて怖かった記憶があります。
このペアはとにかく彼が凡人で私が超人なんですよね。
そして彼は「こいつは俺がいないとダメなんだ」と思っていそうなところがあって、私はそれをわかっていてそんなところが可愛いと思っていそうだし、だから私も「彼は僕がいないとダメなんだから」と思っていそう。共依存ズブズブ。
彼の「(血のサインを)やったことある」、それひとりでやってないよね??って気分になってきたよね笑。超人拗らせて厨二病極まった彼……「また変な遊び覚えてきたよ」くらいに私が思ってたらおもろい。
前回公演で感じていたサイコパスみが薄れていたけれど、すべてを私が操っているペアですね。いじめられっ子だったのでは?という印象は消えたなぁ。「庇護する対象」を演じていた前回より、今回はあざとさ、というのを感じたなぁ。
成河私、凡人の福士彼を「はいはいかわいいかわいい♡リチャードは超人だよね♡」ってにこにこ母性に近いきもちで見守っていそうですらある。いやこれサイコパスだな。

「さあ、何を知りたい。」、この煽りがまた最高ですよね。審議員には私と彼の物語が分かるはずもない、って思ってるんだろうな。
サイコパスみは薄れてもホラー、しかもサイコホラーなのは私の表情を彼が見ていないからかなぁ。仮出所後に彼の墓の前で息絶えてそうな気配すらあるもんな成河私……救いがないな……。
「一緒に死ねるなら、それも悪くない」、彼を鳥籠の中に閉じ込めるため=自分だけのためにするため、なんだろうけど、それはもう愛じゃなくて執着なんだよね。ペアによってここまで違う。すごい。

「資本主義の病」というのがわたしにはまだ理解できなくて(勉強不足……)でも「これはラブストーリーではない」と気付かせてくれたのもこのペアでした。
いやラブだけの脚本でないのは重々承知だし、成福もベースには愛があるんですけど、愛の形が今までのペアとは決定的に違うなって……彼も私もお互いへの愛より自己愛が強そう。
というより、「実在の事件を基にした物語」をひしひしと感じるのはこのペアです。
他のペアは「※実在の事件・人物には関係ありません」って注釈が入りそうなんだけど、「※実在の事件を基にしたフィクションです」って注釈が入りそうな感じ……伝わるかな……。
自己愛が強そうだから「罪をお互いに擦り付けあった」史実にも納得できちゃうというか。
あったといっても、福士彼は「あいつがやったんだ!」って声を荒げそうだけど成河私は「僕は止めたのに彼がハンマーで殴ったんです」って淡々と言いそうだな。

「99年」のラストで彼が段上に上がって細長い照明がふたりに当たっていたところ、成河私の顔半分にしか当たっていなくて、ただの偶然なんだろうけどぞっとしたな。
わたしは2019年の成河私は二重人格なのでは……?と思っていたのですけど、今回はそんなに見えないなぁ……とぼんやり感じていたところで記憶を引き戻されてしまった。

歴代ペアの中でも異色のペアだと思います。愛より執着が強いペアというか。どんなペアでも成り立ってしまう、脚本の力がすごいなぁ。

2021.05.29. 20時(配信)