世界が終わる日が休日ならいいな

好きなものを好きなときに好きなだけ

舞台「ピアフ」を観たよ

【愛を燃やし 、生命を燃やした孤独な小雀】

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再演発表直前にふとピアフのことを思い出し、そういや観たことないなぁ、次再演されたら観に行こ〜と思っていたら、ほんと数日後に発表されて飛び上がってしまった。しかもスリル・ミー以来応援している山崎大輝くん出演のおまけ付き。というわけでいそいそと手配して観劇してきました。
ピアフのことは歌を何曲かと(昔ハマってヘビロテしていた時期がある)愛に生きた壮絶な人生、という雑すぎる情報しか知らなかった。モルヒネ中毒に苦しんでいたのも知らなかった……。そしてその描写の痛々しさもしのぶさんだからこそではないか。壮絶。
田代万里生さんが去年トークショーでしのぶさんのことを話していて、役作りについて「その人の脳になっちゃえばいいのよ!」とアドバイスされたと仰っていたのだけれど、それを痛いほど感じるお芝居でした。ほんとにそこにいるのは「大竹しのぶ」ではないんですよ。そこにいるのは、孤独で、愛を求め、歌い続けた「エディット・ピアフ」そのもの。ぞっとする。
初見、想いのままに生きたピアフの人生をどう受け止めればいいのかよく分からなくて、困惑というか戸惑いのきもちが強かった。一晩考えるともなくぼんやりと思い浮かべていたら「いや別に受け止めなくてもいいし、感じた気持ちをどこかに置かなくてもいいんだった」ということを思い出した。そしたらなんだかすとんと落ち着いて、おかげで二回目はたくさん泣いた。
それぞれの恋人への情熱的な愛、突き離す愛、見守る愛、年を経て変わっていく愛。そしてトワーヌとの生涯をかけた友愛。
若かりし頃から最期に看取るまで、トワーヌだって愛してくれていたんだなと感じたけれど、ピアフは最期の最期まで孤独であったんだよなと思うと、この言葉が適切かどうか分からないけれど、とても苦しいです。

今回は山崎大輝くんのFC席で観劇しました。とんでもなく前方席をいただいて驚いたけど、役者の生声もお衣装の衣擦れの音も聞こえてその「場」にいるかのように感じられて素晴らしい体験をさせていただきました。
その大輝くんは一幕でも遊びのお相手、二幕はじめでも若いツバメ、そして最後の恋人である夫のテオと三役で恋人役をしているけれど、まったく違う人物像でこの子やっぱり上手だな〜と感心しました。特にテオの深い愛が素晴らしかったな。出会いのシーンで髪を梳かす手が美しかった……。デュエットシーンではピアフを見つめる瞳が雄弁に愛を語っていたし、トワーヌが昔話をしている横で呼び掛ける「エディット」の声音や指先が優しくて愛に満ちていた。
見た目の話をすると、一幕の遊びのお相手での燕尾服+コート、顔が小さすぎて手脚が長すぎてなんかよく分からんようなってた笑。二次元かな?
おててはめちゃくちゃ美しかったし立ち姿は完璧だし唇がちょっととんがってるのとってもかわいかった……。動きがまだ固いので、歩き姿含めもう少し綺麗になってくれたらもっと素敵な役者さんになるなぁと思います。これからも楽しみ。
ところでテオ、ピアフの入院している病院に通い詰めてやっと会わせてもらってから恋人になるってめちゃくちゃ厄介楽屋女じゃねーかwwwwwってちょっと笑ったし音楽業界は時代も国も変わらねぇんだな……と面白くなりました。バンギャの病。

かっこいいさえこ、美しいさえこ、かわいいさえこまで見られてさすがトップスターは違うぜ……!と唸ってしまった。マレーネとしてピアフと歌ったLa vie en Roseも素晴らしかったなぁ。マドレーヌもめちゃくちゃ可愛かった。マレーネはぴんしゃんと背筋が伸びているのに、マドレーヌはほんの少し肩が内側に入っていたのに目を見張った。意識していてもしなくてもどちらでもすごい……。
上原理生くんは直近で観たのは世紀末だったので筋肉担当じゃない……!と謎の感動を覚えた笑。東京藝大出身だったの知らなかった。どうりで伸びやかで美しい歌声なはずだわ。「She」は大好きな曲なので聴けて嬉しかったな。
ピアフのために自分のチャンスを投げ打ってしまうほどの愛情もしっかり感じたけれど、別れを告げられて足元で泣く姿が胸を打ちました。
さて、筋肉担当はがうち笑。がうちを最後に観たのが2010年で悲鳴を上げてしまった。そんなに前!?
ボクサーとしての肉体を美しく仕上げてきていたのも凄かったし、ピアフと楽しそうに戯れているシーンがとても美しかったなぁ。ふたりでいつも初恋のように過ごしていたのだろうな、と思える無邪気でかわいいシーンだった。だからこそマルセルが死んでからの歌がまた悲痛で……二幕冒頭しばらくアルコールに溺れているピアフの手の震えもぞくぞくしたなぁ。

生バンドなのも歌手のお話なだけに嬉しかった!ピアノとアコーディオンを役者のひとりとして舞台に上げて演奏させていたのも音楽ものならではでわくわくしました。
「スリル・ミー」でも「ザ・ドクター」でも思ったけれど、栗山先生の演出は空白の使い方が美しいなと思います。余白ではなく空白。
物理的な、空間の空白もだし台詞の間としての空白もそう。絶妙な空白でいろんな感情と時間が流れていく。それがこちらにいろんなことを訴えかけてくる。そして受け取るこちら側のふとした感情の居心地で感じることがまるっきり違ってくる。
なんというか、それこそが「演劇」なのだなと。役者陣の熱演を含めそれをひしひしと感じた二公演でした。素晴らしいものを観せていただきました。

2022.03.26. 13時
2022.03.27. 13時