世界が終わる日が休日ならいいな

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ミュージカル「キンキーブーツ」(2022)を観たよ

【Everybody Say YEAH!! 本当の自分を探し求めているあなた!】


再演が発表されて、嬉しいのか悲しいのか寂しいのかよく分からなかったのが正直なところ。ローラ以外のメインキャストは初演と再演キャストが続投されたのもなんと言えばいいかよくわからなかった。当たり前だと思う一方、全員新キャストなら諸手を挙げて観に行けたのにとも思った。
でもひとりだけの新キャストが城田であるのは、実力も諸般の事情を鑑みても『最適解』なんじゃないかなとも感じていた。

幕が開いて、「いちばん素敵なもの」と歌う歌詞を聴いて「この演目のことだよ!!」って強く思った。観に来て良かったな、とも。直感的にそう思わせてくれた音楽に感謝した。さすがシンディ・ローパー
城田ローラ、最初から最後まで「人間」だなと感じました。人間が人間として悩んでいるローラ。
登場からずっとシス男性っぽいローラだなぁと思ったんだけど、それはいかにもな作り方をしていたからかも。サイモンとして男装で登場したときに初めて あっ女性じゃん と思った。そのあとはずっと女性と感じていたんですけど。
そういえば、もしかしてチャーリーに恋してたのかも、って初めて感じたな。春馬ローラの恋愛対象は女性かなぁと感じていたのでそう感じたことはなかったのよ。新鮮だったなぁ。
初めて観たときからNot My Father's Sonがめちゃくちゃ好き。ふたりが同じであることをわかりあう曲じゃないですか。バディとして歩んでいく決意をしたんだなと感じる曲なので。
春馬ローラとは何というかな……「同質」であることを理解し合っていたけれど、城田ローラとは「同形」であることを理解し合ったというか。春馬ローラと比べて城田ローラは物質的な印象がありました。
そのぶんHold Me in Your Heartはお父さんのことを受け入れて抱き締めた(概念)春馬ローラに対して、受け入れて向き合ったからこそ別離したような城田ローラという感覚でした。
あと物理的に本当に身長が高いから、角度のあるお席だったのもあって遠近法とは……?って思ったり、チャーリーとローレンが子どもみたいに見えたり、ローラと愉快な仲間たちみたいな画になってたのはちょっと面白かったです笑。あの身長とスタイルの良さは本当に才能だわ。トレーニングという努力を怠っていないからだろうけれども。
城田ローラと並んでもあんまり差がないあらたさんってめちゃくちゃでかいんだな!?と今さら気付いた。185cmあった。でかいな!?

それから今回めちゃくちゃ良かった!!と思ったのがドン!
ミラノ直前で焦るチャーリーから離れた工場員を説得して戻したシーン、いつもうるっと来てたけどぼろぼろ涙こぼしちゃったのは初めて。
「ありのままの他人を受け入れなさい」を受けて「受け入れたのはあなたよ、チャーリー!」。
あれだけ焦るチャーリーはほんと周囲にしてみれば迷惑でしかなくて(いやほんとあんなの近くにいたら腹立つ)、でもその「焦るチャーリー」を受け入れて、もしかしたらその焦りの根源も理解してくれたのかなぁと思った。
わたしはあのチャーリー、父親の期待に応えたい息子にも見えているので……でも結果を受け入れてくれる父親はもういないし、余計に焦っているんじゃないかなって。まぁ冷静になってくれよとは思うけど、結局はやりたいようにやらせてみるのがいちばんなんだよな、そういうときってさ。
物語序盤のドンならたぶん怒って終わりだったけどローラの教えを受け入れて実践したドンだからこそ、チャーリーのことを子どものころから知っているドンだからこそできたことだしチャーリーも受け入れたんだなって今まで以上に感じました。
ソニンローレンも相変わらずキュートでおかしくって、それでいて頼り甲斐があるローレンでした。チャーリーのことを好きだと自覚してからもそれを表に出すわけでなし、仕事は仕事できっちりと思いやりをもってこなす。
仕事上で、チャーリーのクリエイティブなパートナーはローラだけど、事務や運営的なパートナーはローレンだなと改めて感じました。
チャーリーとローラそれぞれと工場員を繋ぐ役割だと思っているのですが、そこに立つのがソニンちゃんで、ソニンちゃんが初演からずっと演じ続けてくれて良かったなぁ。いやそもそも初演の発表があったときも「ソニンちゃん以外にいる!?」と思ったんやけども笑。
他のキャストももちろん今回も素晴らしくて、工場員もエンジェルスちゃんたちも大好き。ぎゅっと詰まった関係性がある種ムラ社会のように感じるところもあるけれど(ノーサンプトンは実際そうなんかもしれんけど)、いろんな面を持っているからこそ人だし、愛おしさも感じるのかもしれないな。ってキンキーを観るたびに思います。

春馬ローラ(特に2019)に対して、女神とか聖母とか感じていたんだけど、今回城田ローラを観て、春馬ローラは「女神にならざるを得なかったローラがチャーリーというバディとプライス&サイモンという居場所と仲間を得て人間に戻る物語」だったのかなぁと思いました。
エンジェルスちゃんたちは同じドラァグクイーンだから、居場所や仲間でもあるけれど何というか……この言葉ではしっくりこないんだけど「同じハンディを背負った同志」みたいな感覚に近いと思うのね(ドラァグやゲイであることをハンディとは思っていません、念のため)。でも工場のみんなは違うから。違うけど同じ傷はあるし同じ「人間」だから、そこに居場所があるというのは重要なことなんじゃないかな、って思います。
エンジェルスちゃんたちはロンドンに戻ってショーに出ているのかな?でも離れた場所に「自分たちとは違う人だけれど仲間がたくさんいる」のはとても心強いことなんじゃないかな。
と、こうやって純粋に、演目はもとよりキャスト変更の面白さを楽しめたし、春馬ローラのことをまた理解できて嬉しかったです。
春馬ローラはわたしがいろんなことでしんどかったころに出逢って、たくさん引き上げてくれたので本当に特別で大切で大好きな存在です。それは今みたいな状況じゃなくても変わらない。
その上で、城田ローラにも出逢えて良かったと思います。作品は変わっていきます。時代も変わります。同じキャストだって、人は変わっていくんだから。
だからこそ「今」、「日本版キンキーブーツ」をまた上演してくれて良かったと思う。
次の再演も絶対絶対あると思っているけど、そのときどんなキャストになっても受け入れられるかなって感じさせてくれた公演でした。いやまぁ役者の好みはあるかもしれないが……笑。

蛇足。
先行エントリーもしたし、絶対観に行こう!!と思ってはいたけれど、どう感じるか怖かったのも事実です。
それがダディで真綾ちゃんの「代役」として萌音ちゃんがキャスティングされる発表を見て、城田には本当に申し訳ないんだけれど、「春馬くんの代役」と考えるようにしていました。ごめんね。
けど、The Most Beautiful Thing in the Worldでなんとなく「あっ春馬くんも一緒にいてくれてるな」って感じて、そこからはなんだかほっとして緊張せずに観られました。実際いたかどうかなんてわからないけどさ。でもわたしの中には春馬ローラの記憶があるので、その記憶が寄り添っていたんだと思います。
代役じゃなくて、本役の城田ローラを素直に楽しむことができたよ。ありがとう。

2022.11.19. 18時

2019年公演 最高だったよ