世界が終わる日が休日ならいいな

好きなものを好きなときに好きなだけ

ドラマ「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!」を観たよ

【価値観アップデート!人間関係は対話と理解】


通称おっパン!!
原作はこちら 全話無料で読めるよ

とてもいいドラマだったな、と思ったので書き記しておきます。有料サービス登録していないので記憶が曖昧なところもあるのですが……。
昨年秋に観た舞台の配信でとんちゃんこと東啓介くんに転がり落ちてしまい、このタイミングで連ドラだなんて!というのが見始めたきっかけです(とんちゃん元々好意的に見ていた役者さんだったけど、突然転がり落ちてしまった……)。

軽い気持ちで見始めたものの、脚本や演出、芝居のテンポもよくて面白いし、内容もファミリーもの・世代間ギャップ・セクシュアルマイノリティ・思春期の人間関係……他にももろもろ、と結構いろんなテーマが詰め込まれているもののすっきりとまとまっていた。
3話あたりで原作を読み始めたのですが、そのときは「キャラ単体で見たらわりとイメージが違う配役なんだな」と感じた。
ただドラマ自体にそんなに違和感を覚えなかったのは作品の本質(とわたしが言うのも烏滸がましいのですが)がそのまま反映されているからだと思う。
これは最終回までそうで、原作が意外と短いから60分枠×11話になると時間が足りないからオリジナルエピソードが必要になってくる。そのオリジナルエピソードが「キャラクターと剥離していない」「本質からブレていない」とても真摯に感じられる作り方でびっくりした。
原作者さんたちの撮影現場レポにあったプロデューサーさんたちのこの言葉が、なんというか、覚悟を感じました。

何か不安なところや気になることがあったらすぐに言ってください
完成したものでキャラの意にそぐわないものができたらそれは監督ではなく私達の責任です

折しも、漫画の実写化における改編に端を発する痛ましい出来事が報道され始めていた。
この出来事の要因は複合的なものであろうし、現時点で調査結果が出ていないこともあり、あまり触れるのも話がズレるのでこれに留めますが、メディアミックスというものは恐らく原作よりも格段に関わる人間の数が増えるぶん舵取りが重要で、その船頭たるプロデューサーがこれほどの覚悟を持って仕事をしているのは素直にすごいな、と感じるし、だからこそいいドラマになったんだなと思う。

1月期は他にも世代間ギャップを描くドラマと、セクシュアルマイノリティおよびその結婚を描くドラマがあった。そこと比べるとどうしても前評判は及ばなかったけれど、3本とも見てみていちばんストレスを感じなかったのはおっパンだった。
特に、おっパンでも原作・ドラマともにクライマックスに据えられていたゲイカップルの結婚。
先んじた他ドラマは「法律婚できなくても仲間に祝福してもらえればそれでいい」という結末でがっかりしていたし悲しくなってしまっていたので、「今は法律婚できないし、世間ではまだまだ偏見の目で見られることも多いけれど、祝福してくれる人たちと一緒に法律婚できる未来を待とう」って着地してくれて本当に嬉しかった。結婚式までしてくれたし!
大地くん役の中島颯太くん、円先輩役の東啓介くんが丁寧に演じてくれたのもとても嬉しい。大地くんパパが心配している顔で(心配だって本心ではあるだろうけど)現状ある偏見や差別を並べてきて悩む様子や、それを周囲の力を借りて乗り越えていくドラマオリジナルの展開が素晴らしかったな。
原作は円先輩の両親への挨拶を通して乗り越えていく。原作の最終回が決まるより前にドラマの脚本が書かれたようなのですが、どちらも未来に希望を持てる展開で嬉しかった。
欲を言えば、最終回の2日前に東京地裁と札幌高裁で同性婚を認めないのは違憲との判決が出たところだったので、公式アカウントでMarriage for allのアクションに連帯を示してほしかったかな……これはドラマもだけど原作のほうも。せっかく同性婚を丁寧に描いてくれたので。

年明けにある映画のレビューを読んでいて「他人が自分と違うということを受け入れられない」人が自分が思っている以上に世間には多いのだな……と感じていた。
「多様性」という言葉は正直とても乱暴で、人間は誰しも同じ人はいないし、属性ではなくただその人を尊重すればいいだけなのにと思っている。
おっパンのメインキャラクターはそういう人たちばかりで、最初こそ頑なだった人たちも優しさに触れて心が柔らかくなっていく。
毎週「優しい世界だな〜!」って見てたけど、これが普通の世の中になっていけばいいなと思います。
キャストも、主演の原田泰造をはじめ、妻の美香さんの富田靖子、美穂子さんの松下由樹に豪華だな〜と思っていたら渡辺哲に佐野史郎相島一之と大人組の贅沢っぷりよ!!
前述の通りキャラ単体で見たときにはわりとイメージが違うのですが、作品として原作との差異を感じないのは、脚本だけでなくこの堅実な俳優陣だったのもあるよな〜と思いました。子ども世代を優しく見守りながらも自身もまた成長していく。
「アップデート」という言葉も乱暴だなと思うし、アップデートというよりは理解であるんじゃないかな。そして理解のためには対話が必要。それを丁寧に描いたドラマでした。面白かった!