世界が終わる日が休日ならいいな

好きなものを好きなときに好きなだけ

ミュージカル「VIOLET」を観たよ

【ともに旅をしたもの 旅の先に見つけたもの】


パフォーマンスは良かったけど脚本が気に食わねぇ〜だった。期待していたぶん、かなりがっかり。女性が自立するのに男と恋愛として関わる必要あるの?すんごくシスヘテロ恋愛至上主義な脚本だなと思った。

ヴァイオレットは事故で顔に大きな傷を負い、それで心無い言葉を浴びせ続けられた傷はもちろん同情はするのだけど、「山奥の田舎町」で育っているのでかなり視野が狭い。だから簡単に黒人のフリックに対して「差別される気持ちはわかるわ」なんて言ってしまう。
屋比久ヴァイオレットは事故からこちらずっと世界を閉じていて、だからこそインチキテレビ伝道師に夢を見てしまうし奇跡を託したくなる。
モンティとフリックと一緒にメンフィスに泊まって、鍵が閉まらないことを申告したのはその世界をほんの少し開けてみようと思ったからじゃないのかな。それはモンティと、特にフリックに出会ったからだと思う。
ヴァイオレットはセックス自体に対してあまり抵抗はなく、フリックとモンティどちらにも好意を抱いていたので先に迫ってきたモンティと寝たのもまぁあるあるな流れだったのかな〜と。後でフリックに「部屋に鍵かかってないって言ったでしょ!」とも言っていたので。
フリックに惹かれたのは自分の知らない地獄を知っている、地獄はひとつじゃないと気付いたから、かな。インパクトのあるカジュアルな言葉で片付けることではないのですが。
地獄で生きている者として分かり合えはしなくとも通じる部分があったのかなぁ。
ただ、傲慢さで鎧を着ているモンティとも共鳴しうる部分はあって、だからこそ寝たのだろうとも思う。
しかし観劇前はなんとなくフリックとくっつくのかな〜と思ってたし、フリックのほうが好きそうなのにモンティとくっついたな……になり、最終的にフリックとくっついたな……とエェ……になってしまい……。
多分ね、同性である老婦人の手助けを拒否したのに男とは一緒にいるんだ……みたいなのがある。しかもなんかナンパみたいな感じだったから……フリックとモンティがもうちょっと「Can I help you?」という態度だったら印象違った気がするな。
ヴァイオレットが伝道師がインチキなのを理解し、お父さんの幻想と対話して仲直りできたのは良かったな〜だけど、シスヘテロ恋愛至上主義ウヘェになっていたところで「幸せにしてくれる人はいるか?」にまたげっそりした。せめて「ともに幸せになりたい人はいるか?」とかならまだ……まだ……よかったんですけど……。
どうも全体的に「ここがこうなったところは良かったけど、それが霞むくらい気持ち悪いところがある」っていう感じだったな。

とんちゃんフリックは人種という自分ではどうしようもないことでずっと傷付いていたのに傷付いていない顔をして、泥で傷痕を隠して生きてきたような印象だった。
目に見える傷痕を残すヴァイオレットにある種の同属意識があったのかもしれない。それでも(一応は)前を見ているヴァイオレットに惹かれたし、重ねて傷付いてほしくなかったのかも。
とても優しくてとても臆病な人なんだろうな……とずっと感じていた。
そして白人のモンティはおそらく白人男性の軍人だからこそくる傲慢さがある。
特に「(ヴァイオレットが傷ついても)そのとき俺はいない!」にはぞっとした……アフトで屋比久ちゃん曰く「お前何言うとんねん、モンティに言われたこと忘れてねぇぞ!そのとき俺はいないからじゃないんだわ!」。場内拍手ですよ!ほんまにな!!
ほんととしきだから許されてるんだぞ!?(許してない)という感じで笑、末っ子なんだろうな……と思った。軍人であることは恐らく誉れである時代の軍人一家で、優秀な兄たちに追いつけ追い越せでグリーンベレーになったのかな〜と。

アフトで「その後どうなったと思う?」という話になり、屋比久ちゃんが「今後もしかしたらフリックとお別れすることになるかもしれないけど、でもあそこでふたり一緒に踏み出せたことに意味がある」って言ってたのにはしっくりきました。
屋比久ヴァイオレットはひとりで立てる強さもあるので、わたしはいつかフリックとはお別れするんだろうな〜と感じました。フリックといたら傷を舐め合うようになりそうだなって。ただし、時を経てお互いがいい変化をするのならその限りではない。
樹里ぴょんは「ふたりとも強そうやから(だったかな?)差別反対!とかそういう運動するんかと思ってたわ」って言っていた。その選択肢はとてもありです。同じ目的があればずっとうまくいくだろうけど、逆になければかなりぎくしゃくしそう。
ちなみにモンティのその後について、としきは「願望としてはベトナム行きがなくなったらいいな〜」と言っていて、とんちゃんには「アメリカ舐めてる!?」って言われたり、樹里ぴょんには「戦争はないほうがえぇんやけどな、ベトナム戦争はあるんやわ」などと嗜められたりしていた……笑。

幕開きで黒人差別の表現を映像まで使って入れていたにも関わらず、終盤にはテーマとしてほぼなくなっていて、アレ……?でした。序盤はわかりやすく黒人に対応しない白人ウェイターとかがあったんですけど。中盤もヴァイオレットとフリックの会話で(主にヴァイオレットが無自覚に心無い言葉をフリックに投げるということで)あったんですけど。
わざわざ幕開きに入れてきたのにあまり意味がなくなったおかげで「あれって結局どうなったの?」というもやもやが残ってしまった。
今から思えばあの演出って主人公の苦悩の根源を見せる演出なんだよな。あそこでヴァイオレットの傷ができた事故を見せるんじゃダメだったんだろうか……事故のシーン出てきたのわりと後半だったよね。
そもそもオリジナル版にあのシーンってあるのかな?って調べたら、オリジナル版ではなくてフロリダ版なんですけど、こちらにはないみたいなので日本オリジナルシーンてことなのかな?
ヴァイオレット役の公式チャンネルみたいなので貼りますが、なんか問題あったら消します
うーん、おかげで蛇足感すごくて……必要な情報であるのは理解するので、ミュージカル「パレード」みたいに必要な情報をA4用紙にまとめて配ってくれてもよかったのでは、と思いました。
(パレードは基になった事件や南北戦争についてなどの解説を印刷して配ってました。おかげで置いてけぼりにならずに作品に集中できた)
あと、基本的にイマジナリーフレンドのいる脚本は好きなので(エリザやM!、N2Nとか)そういう意味ではとても好きなのですが、ただ子ども時代の自分なので……その……おもひでぽろぽろやなって……。

屋比久ちゃんをはじめ、樹里ぴょんsaraちゃん谷口さんと、女性陣がソウルフルな歌声を持つ人たちだったので大満足でした!欲を言えば樹里ぴょんの歌声もっと聴きたかったな〜いやそういう演目観に行けなんですが。樹里ぴょんの歌大好き。
原田くんの力強い歌声も素晴らしかった!あの歌声で歌われたら騙されちゃうよねわかるわかる〜って深く頷きながら観てしまった笑。
スーパー原田タイムほんとに楽しかったのでもうちょっと観たかったくらい笑。

……と、やっぱり「パフォーマンスは良かったけど脚本がわたしには気持ち悪すぎる」となってしまったのでした。
透子ちゃんも観たかったけどスケジュールが合わず……残念だけどそれでよかったな……と思っちゃったのが残念だったな。
そういえばあとひとつ文句言っておこうかな〜!?
初日明けてから出演者のメルマガで「三浦さんと屋比久さんでそれぞれの結末です!」って書かれてて、そんな情報初めて聞きましたけど!?だった。
どうやら「稽古が始まってみたらふたりともまったく違うヴァイオレットだったので演出を変えた」みたいなのだけど、それは……違うのでは!?というかそれならそうともっと宣伝すれば!?だし、初日が明けてから言う情報ではないんですよね!?
などと舞台上以外でのストレスも多分にあり、観てよかったなとは思ったものの、後味が悪い観劇となってしまいました。本当に残念。

2024.04.28. 13時(ヴァイオレット:屋比久知奈)