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ミュージカル「スウィーニー・トッド」を観たよ

【歪んだ音で紡ぐ復讐譚 圧巻のカンパニー】


いや〜ソンドハイムの難曲!不協和音もだけど音そのものが歪んでいるのもイギリスっぽくて大好き!あと汽笛の音も大好きなんですよね……!スウィーニー・トッド観てるぞ!ってなります。
キャストがみんな振り落とされないように必死……という感じもあまり受けなくてとてもよかった!しがみついてる感じはしたけど、それがいい緊張感になっているなと感じました。
(だって前回観たソンドハイム作品がトラウマのITWだったので……)
2013年の柿澤勇人/高畑充希回以来11年振りに観たのですけど、わたしの記憶の8割がジョアンナとアンソニーのところだったな……と気付いた。JohannaとKiss meがめちゃくちゃ好きだからだろうな……。
映画版は公開当時ジョニー・デップにハマっていたので観ており、観劇前に久々に観たら普通〜にデップにメロってしまい、アラン・リックマンにもメロってしまった……好きです……。
そしてKiss meがなくてアレ!?になってしまった。なかったのか……。

市村パパとしのぶさんは圧巻でしたね。正直滑舌ゆるくなったなーと思うところもあったけれど、とにかく説得力がすごい。喋るように歌い、言葉で芝居するといった感じ。
力を抜くところは抜いて笑いどころがしっかり活きていた。
市村パパのまさに絶唱!特に大楽のエピローグが特に素晴らしかった。本当に歌い切ったという言葉がぴったりでした。
「復讐の神に取り憑かれ」るほどの絶望や憎しみを感じるほど妻子を愛していたのが痛いほど伝わってくる。
まぁトッドさんはそれだけルーシーのことを愛しているのなら乞食女の顔見た瞬間に気付け、そうしたらこの悲劇はなかったんだよ……というあれですが……身も蓋もないけど。
しのぶさんはずっとキュートでチャーミングで、トッドさんのことを独り占めしたいけど自分のことを見てくれない焦ったさに地団駄踏んでいる様子がかわいい。
店の周りをルーシーがうろついてるの不安で仕方なかったんだろうな〜。嘘を吐いてはいないけど本当のことを言ってもいない、後ろめたさもありつつ今が幸せでうっかり忘れていた様子がいい。
それが若い女の子の初恋みたいに感じられるのはしのぶさんのラヴェット夫人ならではだな。

初演から続くシンディトビーの可愛さったら!11歳のきゅるきゅるした少年で、飢えていた親からの愛をラヴェット夫人から受け取れたんだなぁとマフラーのシーンでしみじみ感じました。それと同時に初恋だったんだろな〜保育園の先生が初恋みたいな……。
もう51歳なことにびっくりしたけど、シンディの底力を改めて見せ付けられました。
あと、エリザに初めて出た頃は「サックス吹けるのになんであんなに音が拾えないんだ?」とか言われてたけど、こんなに泣かせる歌を歌えるようになるなんて……!
諒くんトビーも脚が悪い設定にしたんですね?諒くんに合わせて半ズボンのお衣装なのよかったな。半ズボンのイメージあるもんね。
無邪気で情に訴えるお芝居がとてもよかったです。ずっと飛び跳ねてる印象があった、なんというか本当に子どもみたいで……ドラマで観る諒くんもずっと高校生くらいのイメージのままだけど、それよりもっと幼い感じ。

ターピン判事、アラン・リックマンにメロった(でもやってることキショ……とは思った)ところだったので、こんなにキショかった!?って焦ってしまった笑。あんな……裸でセルフ鞭打ち!?キショ!!ってなった理生くんターピン。熱演でした!ほぼ特殊メイクでお顔ほぼわからんかったけど笑。
お歌がとにかく圧!で思わず聴き入ってしまった。もっと聴きたい!でもターピンキショいよ〜!!の繰り返し。
安崎さんターピンはセルフ鞭打ちもなんか儀式か……くらいの温度感で観られたんですけど、蛇のような感覚は安崎さんのほうが強かったかな。ぞっとする感覚。
そのふたりの部下であるこがけんはほんとによいスネ夫で笑、歌がうまいとは聴いていたけれどこのメンバーの中にいて聴き劣りしないのはすごいですね。また機会があれば観たいな。

純粋無垢という言葉がぴったりな、大輝くんのアンソニーとっても良かった!君よく船乗りでその純粋さ保てるな……と感心するくらい。びっくりしたら目に☆が飛ぶ少女漫画の登場人物だった笑。
愛に夢を見ている青年、だから一目惚れで駆け落ちしちゃうんだろうなってすんなり納得できた。
なんとなく、敬虔なカトリック信者なんだなぁと感じていて(どこがそう感じさせたのかよくわからんのですが)、フォッグ博士を撃てないのは「人殺しにはなれない!」という感覚があったのかなと思いました。怖いとかそういうのではなくて。
そういやめっちゃ気軽にパリに行こう!って言うな……と思ったのですが、船乗りだからドーヴァー海峡くらいならすぐそこな感覚なのかな。ちなみにプリマスまでは420kmくらいみたいです。
大好きナンバーのJohannaとKiss meをしっかり聴かせてくれてとても嬉しい。元々上がよく響く人だなと思っていたけれど、下のほうの響きも深くなっていて(音の高低ではなく)、ソンドハイムミュージカルを乗り越えた次はどんな歌唱になるんだろうとわくわくします。早く次のお仕事知りたいな。

ふうかちゃんジョアンナは絶望の底で見つけた愛で勇気と強さを知ったけれど、アンソニーがあまりにもヘタレだから間違った方向に向かってしまって……って感じでした。
ふうかちゃんの可愛い声が相乗効果を生んでいて、アンソニーと愛と希望を語り合うKiss meが素晴らしかった!ほんとふうかちゃんの声って一歩間違うとくどい響きになりそうなのに、絶妙にただただ可愛い響きなのがすごい。
お話のあとはきっとアンソニーを引っ張りながらふたり仲良く暮らしていくのだろうなと思えました。
今気が付いたけど、ふたりで語れるロンドンの思い出ってないんだな。ジョアンナのお部屋での逢瀬しかない。どうにか幸せな記憶を紡いでいってほしいですね。

最終盤のトッドさんとラヴェット夫人の調理場でのダンスがめっちゃくちゃ好きなんですよね。地獄の中で踊るシーンに対して癖があります(仮面のロマネスクのせい)。
もうちょっとだけ長く見せてほしい……と思うくらいに好き。
男も女も理不尽に死ぬ、救いのない、後味悪〜い、けど音楽でカタルシスを得られる演目でよいですね。話自体はそんなに好みじゃないけど(なので再演ごとには観ていない)音楽がほんとに好きなんですよね。
前述したけどJohannaとKiss meがほんとに好き。リプライズされまくって繰り返し聴くからというのもあるかも。リプライズこそミュージカルの醍醐味だし。

大阪が大楽だったのでご挨拶があり。
前回の「ファイナル」で本当に最後のつもりだったけど市村パパがどうしてもやりたくなってしまい、しのぶさんに連絡したらしのぶさんもやりたい、亜門さんもスケジュール空いてる……ということで実現したそう。セットも全部処分してたので作り直したんだとか(だから数年後にまたやるかもね!って笑)。
確かに「最後最後詐欺じゃん!」なんて笑っていたけど、やれる限りやろうとしているのはいい。というか本人にやる気があるのがいちばん。
ただやっぱりご年齢のこともあり、さすがに今回が最後かな……とは思うので、その公演を観られて嬉しかったです。客席もめちゃくちゃ熱かった!
カテコでしのぶさんが「言葉にできない」を歌いながら飛び跳ねたり、ゾンビメイクだからって全員でスリラー踊ったり、シンディが徐ろに集合写真撮り出したり自由だったのも面白かった笑。
シンディ、「段取りにないことをしております!」じゃないんすわ笑。
先に楽日を迎えたWキャストは当該公演でご挨拶がありましたが、時間もないからか大楽メンバーは初演キャストの三人しかなかったのがキャストファンとしては少し残念でもあり……いやカテコでのご挨拶なんて皆さまのご好意なのでわがまま言ってはいけないのですけど!!

それを抜きにして、めちゃくちゃいい大千穐楽でした。お疲れさまでした!

2024.04.27. 17時30分

2024.04.29. 13時(大千穐楽