世界が終わる日が休日ならいいな

好きなものを好きなときに好きなだけ

映画「ファンタスティック・ビースト 黒い魔法使いの誕生」を観たよ

【わたしたちの知らない魔法界】


ファンタスティック・ビースト 公式サイト

控えめに言って最高だった。あまりにも最高だった。面白かった!
ハリーポッターシリーズの魔法で好きなところはめちゃくちゃアナログなところ。例えばクイニーが料理するところ、魔法で道具を動かして普通に調理するのとか、ホグワーツの食堂の料理も、あれって屋敷しもべ妖精がご飯作って下から上げてるんじゃなかったっけ!?あれ!?これ公式だよね!?
なんというか、魔法(物理)って感じなところが好き笑。

前作はハリーポッターシリーズとは直接的に関係無かったけど、ダンブルドアやマクゴナガル先生が出て来たことでスピンオフ感がとても強くなったね。地続きなんだなと実感したと言うか。マクゴナガル先生、一瞬でマクゴナガル先生って分かったのも凄かった。マギー・スミスかと思ったもん笑
よその(というのもなんだが)話だったのが、ぐっと近くなりました。昔からの知人の昔話を聞いている感覚です。当たらずとも遠からずな気がする。ダンブルドアとは小学生のころからの知人なんですわ。みたいな。
そして「情報過多」との事前情報があったけどめちゃくちゃに情報過多だった!!盛りだくさんだったね!!いやいやていうかそもそもエディ・レッドメインジョニー・デップジュード・ロウってだけで情報過多なんですわ!!!!!圧が!!強い!!!!!デップとロウの「血の誓い」なんてだめでしょあんなの無理です。無茶です。限界です。セクシー限界突破。勘弁してほしい。
前作のようなわくわく冒険映画というよりはハリポタの終盤のような映画だったなと思います。正体が分かっている悪役がいるからかな。そして最後の……クリーデンスの本名……鳥肌たったし涙ぼろぼろこぼれてきたよね……そんな……そんなところに繋がるなんて……原作読み直さないと……。
昔から知ってるダンブルドアの過去をわたしたち全然知らないんだな……って謎にショックを受けてしまった。優しい近所のおじいちゃんって感じじゃん(?)あの境地に達するのには数々の修羅場をくぐり抜けてきたんだなって……家族と友との決別が……あのおじいちゃんには……という謎な心境です。ううう。

それから、ニュートとティナ、ジェイコブとクイニーのカップルもはちゃめちゃに可愛かった……最高では……かわいすぎる……ハリポタでは初期にハリー×ハーマイオニー推しだったので、違うカップルで成立したのが子ども心に地味にショックだったのですが(今は好きだよ)、公式で成立しておいてくれれば怖いものはないです笑。さすがにこの4人がほかの誰かと違うカップルになることは無いやろ……無いよね……?5部作だけど……無いよね……?いや別れてもショックを受けたのちに立ち直るとは思うけど……笑。
次が2020年公開なの待ち切れなさすぎる。また観に行ったりユニバのホグズミード行ったりしてわくわく待っておきたいと思います。

2018.11.24.

映画「ボヘミアン・ラプソディ」を観たよ

【俺たちは家族だ そうだろ?】


ボヘミアン・ラプソディ 公式サイト

中学生のころ。英語の先生が一週間に一曲洋楽を選曲して、歌詞と対訳とともに聴かせてくれていて、そこでQUEENに出会った。曲は「Killer Queen」だった。好きだなぁと思って地元の小さなレンタルショップでCDを1枚借りて聴いてみたらどこかで聴いた曲に溢れていた。
そのCDは日本企画のベスト盤である「JEWELS」だったので、まぁ知っている曲ばかりでも不思議ではなかったのだけれど、繰り返し繰り返し、今でも聴いている1枚になった。
というか、ベストとは言え16曲も入っているのにほとんど聴いたことあるって凄すぎない!?と今さらながら驚いてみたりする。

さて、そのくらいの知識しかないけれど「Bohemian Rhapsody」とても楽しみに観に行きました。劇伴としての音楽だけを切り取ると、「いやもっと聴かせてよ!?!?!?」と思ったんだけど、帰宅してからヘビロテしてるのでそういう戦略だったのかな笑
栄光の中にいる人が孤独というのはフィクションでも現実でも聞く話ではあるけれど、QUEENのフロントマンとしてのフレディの孤独をとても上手く描いていたとおもう(ファンの方のツイートを拝見すると時系列やらが動いているところもあるようだけれど、わたしは知らなくて口出しできないので脚色として置いておきます)
そしてQUEENキャストの4人があまりにも生き写しじゃない……?その生き写しキャストの熱演というか、好演というか、とにかく素晴らしすぎる演技がたまらなかった……4人それぞれの距離感や言葉にできない感情が瞳や仕草に表れていたと思う。あまりにも自然……信頼しているからこそのやりとりなんだろうな〜〜って感じました。
「家族だからそばにいる」「家族だから喧嘩する」「家族だから仲直りする」っていうのに説得力があった。キャストたちもいい関係なんだろうと思ったし(プロモーション来日時のパネル芸最高だった)、QUEENも実際こうだったのかなぁ、って思いました。詳しく知らないけど知りたいなと思えた映画だった。ので、当時のことを教えてくれているツイートなんかをずっと読んでます。
それでもやっぱり45歳は早いよフレディ……途中からずっとずびずび泣いてた。

QUEENだけじゃあなくて、「世代」ではないのに曲を知っているのはすごいなと常々思う。ROCK IS "NOT" DEADだよ。
音楽で世界は変えられるし、音楽で人生も変わる。
わたしはたくさん音楽に救われてきたし、これからもきっと救われるんだと思う。作っている人たちもそうなのかもしれないなって改めて感じた映画だった。
普通に映画としても音楽映画としても、伝記映画としても素晴らしかったなぁ。ぜひみんな観てみてほしい。

2018.11.22.

宝塚月組「エリザベート」東京公演千秋楽LVを観たよ


ライブビューイングで東京千秋楽を観劇しました。


これはかいちゃんの退団発表を受けてだけれど、毎公演毎公演こんな感じなので……特にちゃぴちゃんは娘役としても役者としてもとても好きなジェンヌさんだったので寂しさで胸が締め付けられるようだった。素敵な千秋楽になってよかったです。

【ありがとうちゃぴ 役者の揃った月組

エリザベートはムラ公演も観劇していました。

そのときから生徒たちの演技が素晴らしかったのですが、特に代役公演を経たルキーニのれいこちゃん、シュテファンのゆのくんが素晴らしすぎた……!
れいこちゃんのルキーニはなんというか、凄みを増した。数公演でもフランツを演じたのがいい経験になったんだろうか。ゆのくんも、フォロワーさんと話していたけれどシュテファンで「この子上手だな」って思えるって相当だと思うんですよね!?れいこちゃんのフランツもゆのくんのルキーニもはちゃめちゃに観劇したかったよ〜!!映像残して欲しかった〜!!無理だと分かってはいるけれど!!とは言ってもムラ公演を観たのも半ばの頃なので、ただ単純に経験値を積んでいったということなのかもしれない。それでも東京千秋楽にあれだけのものを披露できるというのはすごいと思う。
宝塚のエリザベートは型が決まっていて、その型の中でどれだけのことができるか、というタイプの公演だと思う。それは演出とかもそうなんだけど、それでもその型の中でどれだけのことができるか、どれだけはみ出てもいいのか、とギリギリのところまで踏み出していたんじゃないかな(エリザベートで引っ掛かるのはルキーニくらいだろうけどすみれコードもあるし)。ほんとにれいこちゃんのルキーニ見応えあった。もっともっと色んなお芝居を観たい男役さんです。95期ほんと隙がない……。
95期と言えば、今まで専科のお姉さまたちがしていたマックスを演じていたまゆぽんも素晴らしかった。なんという貫禄。同期であるちゃぴとの息もぴったり。「パパみたいに」とてもとてもよかったなぁ。じんわりして泣けた。
みやるりのフランツもよかったな。シシィのことが好きで、それが故に一歩引いてしまうフランツ。年齢の重ねかたもムラ公演より説得力あった。「夜のボート」からの「最後の審判」の切り替えも上手かった〜アンナ・カレーニナとても楽しみなんだけどチケットは手元にありません。観たいようぅ
ゾフィーのすーさんもさすがの存在感だった。下手すれば意地悪な姑で終わってしまうゾフィーだけど、姑よりも皇太后感がすごかった……親バカ感も無かった……すーさんのお芝居がいつもいつも舞台を締めてくれていたし、すーさんの情がこもった歌声を聴けなくなるのは残念……。
そしてそしてちゃぴ。やっぱり宝塚版よりはウィーン版に近かったな。時代の波に飲まれながらも自分の中の死と向き合い、最後まで自分で在ろうとしたシシィだと思う。ちゃぴの役作りの仕方とか、表情とか、そしてダンスとか、大好きだったので卒業はやっぱり寂しい。次はいつ観られるか分からないけど、娘役という枠を飛び越えた舞台を観せてくれることを楽しみにしています。

ここ数年の月組さんは役者が揃っているなぁという印象で、安定したお芝居が観られて嬉しいです。ちゃぴちゃんとすーさんが卒業してそのバランスは変わってしまうけれど、次の月組公演もとても楽しみです。

最後のご挨拶も、やっぱり胸が締め付けられる……ちゃぴちゃんは特に、娘役に転向してすぐの抜擢、当時わたしは宝塚から少し離れていた時期だったので遠巻きに見ていただけだけれど、いろんなプレッシャーがあったろうとおもう。るうくんが「どうしよう、出来ないと泣くちゃぴを見てきた」と言ったけれど、やっぱりファンには計り知れないものがあるんだろう。どうしても「いろいろあるよね」なんて言葉で済ませてしまいがちだけれど、たくさんの努力を重ねてあの輝きはあるんだと再確認しました。
これから先もまだまだふたりの舞台を観ていたいです。ちょっとお休みして、また舞台に立ってくれたらいいな。2年間の組長、7年間の主演娘役、本当に本当にお疲れさまでした。素晴らしい公演をありがとう。


2018.11.18. 15時30分公演

宝塚雪組「ファントム」を観たよ

【You Are Music あなたの調べは舞い降りた天使】


とにかくお歌がすんっっっばらしかった……!
そもそもだいきほにファントムってそれだけで素晴らしい公演なのは約束されていたけど、予想を上回る出来。まだ初日明けて5日目ですけど……!?
お歌もお芝居もとてもとても素晴らしかった。特にビストロのシーンのお歌は鳥肌ものだった……!
エリックはどこまでも孤独で繊細で、クリスティーヌの声を初めて聴いたときの安心感や「やっと見付けた」と言わんばかりの表情、嬉しさを抑えきれない歌声、本当に素晴らしかった……仮面を外してクリスティーヌが逃げたあとの慟哭なんか、「やってしまった」「彼女になんてひどいことを」って言ってるように聞こえた。歌声にすべてこめられる、本当に素晴らしい歌手で役者だよだいもん……
クリスティーヌも最初のパリの街からお稽古〜ビストロでのお歌の変わりようがすごい。成長しているのが手に取るようにわかる……仮面を外すよう説得するシーンも素晴らしい。誇張なしに天使の歌声。素晴らしすぎる。ラストシーン、ピアノを弾きながら歌って、自分の歌声にエリックを見付けたんだね……って泣けてしまった……誰よだいきほにファントムやらせようって言ったの……ありがとう……
カルロッタの舞咲りんさんも素晴らしくて、憎たらしいカルロッタを軽快に演じてらした。あとお歌……お歌の高低差がすごかった……あんなにお上手なのにあんなに下手に歌える!?ってかんじw
シャンドン伯爵の咲ちゃんもプレイボーイだけどちゃんと見る目があって笑、クリスティーヌに一目惚れしてしまったんだな〜というのがよく分かった。クリスティーヌを助けに地下に行こうと決意したところも素敵だったな。あそこの銀橋ソロ、初演とは違うんだね?花組版ふたつともを観たのが遠すぎてよく覚えていない……当時の宙組担なので初演ばっかり繰り返して観ているから……

全体的にセットもお衣装も豪華ですげぇ……って思ってたけど、オペラ座を訪れる前のクリスティーヌのお衣装ちょっと豪華すぎない!?デザインこそパリの庶民だけど、布とか……キラキラとか……ちょっとアンマッチな気がする……あとエリックの緑色のお衣装ちょっとふしぎだったな……
シャンドンガールズもなんだかかしましさが増したというか……ちょっとやりすぎかな?という感じがした、嫌味ったらしすぎるかな 全員仲がよくてクリスティーヌを歓迎している上でのおちょくりであってほしいな。
と、気になったのはこのくらいかな。あとは本当に素晴らしかった!!あーさのアラン・ショレもめちゃくちゃ可愛かったし、シャンドン伯爵も観たいのでB日程にまた行くつもりにしています。また当券かしらね〜〜

あと関係ないんですけど、小道具で贔屓が「バレンシアの熱い花」で着ていたお衣装が出て来て泣いてしまったのは我ながら驚きました笑 よく気付いたなw

2018.11.13. 11時公演 役替わりA

映画「スマホを落としただけなのに」を観たよ

【今の時代だからこその話】


スマホを落としただけなのに 公式サイト

先日「search」を「わたしたちの話じゃん」って言ったけど、こっちのほうがそうでしたわ……いやもう……めちゃくちゃ……これは……今の時代の話……
スマホハッキングから始まって追跡アプリ、ランサムウェアマルウェアSNSハッキングにフィッシング詐欺、カード犯罪にデートドラッグetcetc...そんなに盛る!?ってくらいにてんこもりでした。
話の展開はある程度予想のつく展開だったしやっぱりねという感じではあったけど、ミスリードは上手かったし、メインキャストの芝居が安定していて観やすかったな。それから景子の顔がいい。最高だね。
あとは(敢えて書かないけど)真犯人役の怪演!!劇場でも若い女の子が悲鳴あげてた笑。彼の芝居でサスペンススリラーとしてめちゃくちゃレベルが上がったと思う。怖かった笑。
個人的には、タイトルが少し損しているなぁと思う。長い。アオリかと思った。あとタイトルで説明しすぎかなという気もする。

ところで今期ドラマ「獣になれない私たち」にも田中圭が出ていますが、それにもこちらにも「スマホを落とす田中圭」と「以前勤めていた派遣の子と付き合って結婚を考えている田中圭」がいてちょっと面白かったです。

2018.11.07.

映画「億男」を観たよ

【ふたりの関係性がエモすぎる】


億男 公式サイト

昨今「エモい」という言葉が乱発されすぎててあまり使いたくないのですが、まぁ使ってしまいますね、エモいです。めっちゃエモい。
落研の新歓で出会った九十九と一男、足して百、ふたりで落研のエース、いやいやあまりにもエモい。三億当たって最初に相談するのが10年会ってない九十九とか最高すぎでは??ふたりでモロッコ旅行するの最高だし一男が倒れたからって35万くらいぽんと払う九十九エモい、やばい。吃音がある九十九が落語は滑らかに喋るの最高じゃん……やばいじゃん……お金のことを話してる九十九に「なんだ喋れんじゃん」って言ってる一男の表情がほんっと素晴らしかったなぁ、感情が読めない絶妙な表情だった……最高……

脚本が面白かったかと言われると微妙なんだけど、役者の喋るテンポが良くて最後までトントンと進んでいった感じ。北村一輝藤原竜也をそんな一瞬だけで使ってもいいのか。藤原竜也がお金を搾取される側じゃなくてする側になってたのがちょっと面白かった笑。
結局これからどうなるのかは分からないという終わり方で、これがよいときもあるんだけどわたしはあんまり……九十九と一男の関係だけ見るとめちゃくちゃエモくてよかったんだけど。物語の終わりとして考えるとちょっとなぁ。という感じでした。最高にエモかったけどな!!

2018.11.07.

theatre PEOPLE PURPLE公演「ORANGE」を観たよ

阪神・淡路大震災の記憶】

大阪府下ではいちばんの被害を受けた地域である北大阪で生まれ育ったわたしは当時5歳で、リアルタイムの記憶はほとんどない。揺れで起きたと思ったら母が「大丈夫?」と声を掛けにきたと記憶しているのだが、母曰く「ぐっすり寝ていた」そうなので、この記憶は他の地震のときかもしれない。
なぜかはっきりと記憶していることがひとつあって、それは幼稚園のお迎えに来てもらって各々母親の自転車に乗せてもらっているときに母親たちが交わした会話。
「買ったばっかのコーヒーメーカーが割れちゃってん」
「うわぁ残念やねぇ」
誰の家のコーヒーメーカーなのか覚えていないけれど、この会話はなぜかくっきりはっきり覚えている。
我が家は震災の半年前に新築建て替えをしたばかりで、だから潰れずに済んだんちゃうか、というのが父親の見解だ。
アップスタンドのピアノが動き、食器棚の観音扉が開いてその棚に片付けてあったお皿がほとんど割れた程度の被害だった。
三歳上の兄の友人の話では、箪笥が倒れてきたけどたまたま空っぽだったから九死に一生を得たとか(なんで空っぽなんだ)、小学校の教員がひとり亡くなったとか、そういう話もあった。あぁそういえば、戦前からある小学校の校舎の一部が崩れて落ちて来て、戦時中に校舎を墨で塗った跡が出て来たなんて話もあった。
近所に広い敷地の公園というか空き地があり、気が付けば仮設住宅が所狭しと立ち並ぶようになっていた。その仮設住宅が無くなったのが何年後のことなのかは覚えていない。

【情報を極力減らした演出、それに応えた役者】

演劇的な感想を先に言ってしまうと、セット転換がほとんど無く、小道具や芝居だけで観せていく方法はとても好きです。普段ミュージカルを観ることが多くて、いつも観ているのは宝塚だし、大きなセットがあることがほとんどだけれど、観客の想像力を信頼している演出もとても好き。
ミュージカルとストレートプレイはそもそも演出の組み立て方が違うと思っていて、今回はストレートプレイのよいところを凝縮したような演出だなと思った。消防関連以外の小道具をほぼ無くすことによってそれが際立つし、無駄な情報が排除されることによってこちらが頭を働かせやすい。あと転換もしやすい。こういう演出は役者の演技力がぐずぐずだと何もつまらないけれど、3時間近くずっと引き込まれたままだった。
役者であれば当たり前と言ってしまってもよいのかも知れないが、普通に喋っているようで言葉がきちんと客席まで聴こえてくるのはもちろんのこと、どこまでも普通に見える。ファンタジーではないリアルの現代劇はどこまで「普通」に見せられるかが勝負だけれど、本当に「普通」だった。すごい。演技力というのもそうだが、消防士・救命士としての動き方があまりにも「普通」だった……出場のサイレン(というのかな)が鳴った瞬間に予備動作無しに駆けていくのもあまりにも「普通」。こういう細かいところの積み重ねが演劇だとも思う。
全部ではないかも知れないが、救助隊員が要救助者を横抱き、いわゆるお姫様抱っこで運ぶとき、亡くなっている方の腕は伸びっぱなしで、生きている方は腕が回されていたり力なくぶら下がっていたりしたのも凄かった。硬直してるんだよね……。
二階建てのセットを使った演出も上手かったなぁ。上と下で違う空間というのはよくあるけれど、切り替わりの演出が違和感なく進んでいて、このあたりも「観やすい」要因だと思う。2日とも見上げる位置のお席だったけど首を振ることなく観るべきところが視界に入れられたのはすごい……物理的にも観やすかった……舞台を観るのにストレスがなかった。これは演出のおかげだと思う。
シリアスなお話だけど息が抜ける場面もあって、うまく緩急がついてることもあったのも観やすい要因だよね。アドリブのシーンも冗長にならず、いいタイミングで切り上げていた、あの見極めってけっこう難しい。石丸さんがスリッパで綾小路さんの頭をはたくところ、いい音がしていたからあれきっと痛くないやつだよね、テレビ的に喜ばれるやつ笑。はたき返してたのは鈍い音がしてたから痛いやつ、テレビ的に喜ばれないやつ笑。
あと「湊山、明石、尼崎、ビューン ビュン!」は「明石でしょ?俺尼崎ですもん」から笑ってしまったのだけど、東京公演ではウケなかったと聞いて、ご当地ネタすぎるな!!ってまた笑ってしまった笑。

【"被災者"と"被災者"、展開する現実】

東日本大震災のときにも、先般の北大阪地震や台風21号の際にも言われていたけれど、救助する側も"被災者"。今作の登場人物はみんなそうで、桜井さんなんか分かりやすくそうだった。被災した中で他人のために動くというのは難しくて大変なことだと思う。フォーラムで自助と共助の話、「まずは自分、次に家族、それから近所の人」という話があったけれど、まずは自分というのは変わらないにせよ、家族より近所の人を助けないといけない。
そして指示には従わなくてはいけない中、「声がしなければ次の現場へ」という指示が出ていたというのは、フィクションとして見ているだけでもつらいのに、当時実際に指示を出した側、出された側、そして民間人は、どれだけつらかったんだろう。
この脚本の肝となる震災のシーンは本当に観ていてつらかった。「6階建てのマンションが2階部分が潰れてしまっている」というのは今までに聞いたことがあったのを思い出した。家屋の倒壊が激しかったのも、電気が通り出して火事が増えたのも聞いたことがあると思い出した。
「家族を助けて」と叫ぶ人々の姿も、助けられなくて叫ぶ救助隊員たちの姿も、当時至る所で見られた姿なんだろうと思う。取材した宇田さんも、取材を受けられた方々も勇気と決断がいることだったんじゃないかな……思い出すのも聞くのもつらい話だよ……
つらいことをきちんと描かないと意味がないし、脚本もぶれてしまうけれど、正面から向き合って作り上げられたことに頭が上がりません。

二幕の火災のシーンも、実際の現場を観たことがないので想像でしかないけれど、現実もこうなんだろうというくらいに真に迫っていた。
(マスクを着けても台詞が聞き取れたことにもびっくりした、皆さまさすがです)
先述したけれど、リアルな演劇はリアルな芝居があってこそ成り立つ。けれど演劇的に嘘をつかなければいけないこともある。今回の舞台は限りなくリアルに近付けた芝居をされていたと思う。嘘が必要最低限だったなと感じた。なんというか、それほど現実を伝えたいんだなと実感したというか……決してフィクションではなく現実にあることなんだと伝えたいんだろうなと感じた。
震災だけではなく、普通の火災でも要救助者はいる、いつ自分がそうなるかは分からない、そしていつ命を落とすか分からない。それは救助する側も。

この芝居がリアルだと感じたところのひとつに、小日向の問い掛けに亡くなった山倉が返事をしなかったことがある。小日向が山倉の遺品であるグローブを握り締めて問い掛けたあのシーン、御涙頂戴ないやらしい印象にもなりえるが、山倉のシルエットを登場させるとか「小日向さん!」って言わせるとか、そういう演出を入れがちになるシーンだと思う。それをしないで照明と音響だけ変えるのは、とてもリアルでとても演劇的だと思ったなぁ。

【伝え継ぐ記憶】

フォーラムで皆様も仰っていたけれど、災害のことは伝えていくべきなのだとやはり思う。いつなにが起こるか分からない。起きたときに、知識としてあるとなしではきっと行動も変わる。
日本は災害大国で、こればっかりは人間がどうしようもないけれど、そのあとの行動はどうにかできる。それより前に備えることも。
「ひとりでも多くの命を救う」のは救助隊員だけではなく、自分たちひとりひとりの心掛けである。改めてそれを思い出しました。

七條さんが「一日一公演が限界」と仰せだったけれど、観るほうもとても消耗する演目でした。魂を削るような素晴らしい公演をありがとうございました。
千穐楽、おめでとうございます!!

2018.11.03. 18時公演 / 11.04. 13時公演