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HEPHALL ONLINE「保健室で抜く男子高校生の話」を観たよ

【思春期の残酷さ 甘酸っぱさ】

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「保健室で抜く男子高校生の話」詳細

この状況下の中、zoom演劇なるものが流行している。
観劇予定はあるものの未観劇であるが、今回は「無観客公演 生配信」である。
要はライブビューイングかな。ヅカヲタなので慣れています。
と思っていたが、拍手が聞こえない公演は正直堪えた。演劇は観客がいて完成するもの。役者の息遣いや目配せ、空気を受け止めたかった。悔しい以外のなにものでもない。早く平和になってほしい。

脚本と演出のこと。
教室で掃除の時間にふざけたり、先生たちの物真似をしたり、というところはとても男子高校生らしかった。屁理屈を捏ねるあたりも高校2年生なるほど、という感じ。
出演者は4人とはいえほぼ二人芝居。個人的にがなり演出が苦手なのでちょっと疲れるところはあったけれど、特に最後のナベひとりになってからのシーンは郷愁を感じてよかったです。
前半にふたりが動き回っているから後半にミヤがナベのトゲを抜こうとするシーンが対比になってとても印象的でした。
わたしは高校生にだいぶ夢を見ているんですけど、同性同士の微妙な距離感がはちゃめちゃに甘酸っぱくてとてもよかった。
こういう「他人との距離感」は思春期特有のものだと思うので、高校生という設定が生きていてよかったな。
しかし言語化が難しいんですけど、脚本そのものと演出に齟齬を感じるところがあって、これなんなんだろうな。脚本家と演出家が性別も世代も違うからのニュアンスの差なのかな……。
ちょこちょこ、これ何年ごろを想定して作られたものなんだろう……?と首を傾げることもあった。
特に「彼女と別れたんだって!」でくっ付けた小指と親指を離す動きとか(これ若い子わかるの?)、「女の子が好き」なのが「普通」って言っちゃったり。
これが15年くらい前の作品なら時代だものね、で終わると思うけれど、脚本が書かれたのが2019年で、しかも19歳が書いた脚本でなおかつ2020年の公演なのでちょっとがっくりきてしまった。2020年なんだよ……。
異性に惹かれることだけが「普通」である、という描き方をする作品が早く過去のものになればいいなと思う。これだけではなくて、あらゆるマイノリティを「普通ではない」と定義してしまう作品が。演劇は誰かを救うこともできるけれど、容易く傷付けることもできてしまうので。
「ノリじゃん!」ってものすごく無責任で、ものすごく残酷な台詞だよね。その無責任さも残酷さも高校生だとも思うけど。
タイトルが下ネタをミスリードするのも個人的にはちょっとなぁだった。タイトルと内容が剥離してしまっているし。
それからこの作品だけではないけれど、昨今すべて説明するタイトルが多すぎて、情緒がなくなってきているのも残念な流れのひとつ……。

あ、「椅子の破片」と「椅子のトゲ」と使い分けていたのは何か意味があるんだろうか。ただの表記揺れ?

♠︎チーム (福田薫 × 中島大)
上述したことは本当に心底思うのだが、「お前が男が好きだって」〜「バスケットボールが恋人だから!」のお芝居がよかった。
ふたりともが距離を測りかねている感じ、冗談を装いながら「お前はここ、俺はここだよな!」って再確認しあっているように見えた。
ナベはミヤのことが好きだと自覚しているけれど、ミヤはナベへの気持ちを言語化できていないんだろうなぁと感じたな。
ミヤにトゲを取ってもらってるのを見る表情と、ラストの絆創膏を見詰めて口付けるナベ、からの「いってぇ」の台詞、ここの表情が大好きでした。

♣︎チーム (辻谷敬亮 × 古見時夢)
ふたりとも初舞台だとのことですが、お芝居上手くてめちゃくちゃびっくりしてしまった……!
会話が本当に自然だった。チョケかたなんかもかなりリアルで、このへんは若手の特権みたいなところありますね。
初舞台が会話劇の(ほぼ)ふたり芝居ってかなりハードル高かったんじゃないかなぁと思うけれど、Wキャストなのが幸いしたのかしら。緊張していたそうですが、自然体の高校生だったなと思います。
若手に「ガットゥーゾみたいに」という演出をつけるとのことですが、すごくよくわかる。がむしゃらに、泥臭くやっていってくれたらいいな。

ラストシーンで絆創膏に口付けるシーン。♠︎はリップ音がして♣︎はしなかった。
おたくなので友人と深読みをしていたのですが、そもそも♠︎はどちらかというと成熟した雰囲気が漂っていて、♣︎は幼さが前面に出ていた。リップ音のあるなしはその差かなと感じました。
直接的な言い方をしてしまうと、性的な接触(触れたい)まで考えてそうな♠︎とそんなことまで考えていない(一緒にいたい)♣︎というか……。
スリルミーもですけど、ペアごとに印象が変わるのは本当にお芝居の醍醐味ですね。

全体的に♠︎チームは計算して作り上げている印象、♣︎チームは何度も体当たりして作り上げていった印象です。
リモート観劇も楽しいけれど、やっぱり劇場の椅子が恋しくなってしまったのでした。

昨年はHEP HALLで観劇していました

2020.07.26. 16:00 / 20:00