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わたしの贔屓を紹介します

【特別な存在で、必要な存在の、永遠の贔屓】

わたしの永遠の贔屓、それは花影アリスちゃん。
2002年初舞台の88期生。2010年8月8日、88期の日に宝塚を卒業しました。
宙組配属宙組育ち、和央ようか花總まりの"ゴールデンコンビ"時代を支えた娘役のひとりです。
顔が小さく首が長く、お人形さんみたいに細いのに力強いお芝居が印象的でした。

わたしの7年間 もっとあるけど


そもそも宝塚を見始めたきっかけは、中学時代の友人が生粋の宝塚ファンだったから。
その友人が毎日毎日GRAPHと歌劇を広げながら「マミさんがな」「リカちゃんがな」と語り続けるのをうんうん聞いていたのです。
そんなある日、NHKで2000年星組公演「ベルサイユのばら」が放送されることになりました。
「絶対観て!とりあえず観て!」と力強く勧められて、まぁタダやし……とテレビの前に座ったわたしは、終わるころにはすっかりとその世界に魅了されていました。タダより高いものはない。
そのことを報告すると、ほれ見ろと言わんばかりに公演ビデオを何本も渡されました。宝塚受験のためにレッスンしている友人もいましたし、周りを見てみれば「実は好き」といった友人が何人もいました。
そんな折、広島から転校生がやってきました。
日々宝塚の話をしていたわたしたちに「実はわたしも」と言ってきてくれました。
彼女は家族全員で宝塚ファンという環境で、なんと星組時代から花總まりさんが好きだったそうです。
そんな彼女からも借りた公演ビデオの中に、その演目はありました。

前置きが長くなりましたが、その公演は2003年宙組公演「傭兵ピエール/満天星大夜總会」です。
細くて顔が小さくて目が大きくて笑顔が可愛い、わたしの思う「可愛い!」が全部詰まった子でした。
当時は新人公演初ヒロインを終えたばかり、友人に勧められるままお手紙を書いて劇団に郵送してしばらく、お礼状が届きました。
そこからはもう、アリスちゃんしか見えていませんでした。
今ほどチケットが難しくなかった時代です。トップさんのサヨナラ公演でも、S席が完売していたら「すごいじゃん!」って言っていた時代です。
まだ中学生だったわたしは当日B席を求めて友人と一緒に当日券に並び、会が出来てからは頑張ってS席を1枚(これだって7,500円の時代です)、そして当日B席。
会服を買うのならその分公演を観たくて、ガードにはほとんど参加したことのない幽霊会員でした。
それでも毎公演届くお礼状が嬉しくて嬉しくて、アリスちゃんの手書きのサインが嬉しくて、届くたびに飛び上がって喜んでいました。
最初は不安定だったお歌も芝居もダンスも、公演を重ねるごとにしっかりしていってセンターに近くなるごとに嬉しくなりました。
舞台の下でも、同期の春風弥里さん、蓮水ゆうやさん、鳳翔大さんの「みーちー大」トリオを従えるお姫様、のようで4人でわちゃわちゃしているのがとても可愛くて大好きでした。
アリスちゃんは、わたしの青春だったのです。

ある日。宙組主演娘役の陽月華さんが足首を負傷し、長期休養することになりました。
大劇場公演の直前で、そのときの代役は和音美桜さん。宝塚公演と東京公演を終え、続く梅田芸術劇場メインホール公演。
演目は、アリスちゃんが「演じてみたい役」として初舞台のころから挙げていた「雨に唄えば」でした。
もちろん役として挙げていたのはヒロイン役のキャシー・セルダン。それでもアリスちゃんよりも上級生には魅力的な娘役さんがたくさんいらしたし、主演娘役候補ではないかと言われている娘役さんばかりだったので、出演できたらいいなぁ、とぼんやり思っていたのです。
しかして、発表された配役は「キャシー・セルダン/花影アリス」。
ファンのわたしでもこれだけ嬉しいのに、本人の喜びはどれだけのものだったでしょう。
大好きだと公言していたタップダンスを、ずっと「おとめ」に書き続けていた役で踊ることが叶うのです。
発表されたときはアリスちゃんの夢が叶うことが嬉しくてたまらなかった。
主演男役だった大和悠河さんの相手役として、立派に、ほんとうに立派にヒロインを務め上げたことは、ファンとして誇りに思います。

あのころ、主演娘役に就任する学年がどんどんと下がっていっていた時期だったと思います。
主演男役も、他組から組替えしてすぐ就任とか、人事に対する不信感があったころでした。
まりさんが退団してから、紫城るいさん、陽月華さんと続いた主演娘役。
陽月さんが退団されることが発表され、次だろうと、次こそは主演娘役になるだろうと、アリスちゃんのファンも、宙組ファンも、他組のファンも、思っていたのです。
それでも発表があったのは、違う娘役さんでした。
自分より下級生が主演娘役になっても変わらず笑顔で舞台に立つアリスちゃん。
いつの日にか、羽根を背負う彼女が観たかったのは本心です。

そして、2010年4月6日。
白い封筒が我が家のポストに投函されていました。
「あ、白封筒ってほんとうに届くんだ」って妙に冷静なきもちだったのをよく覚えています。
それからの4ヶ月は怒涛の4ヶ月でした。
幸い(?)旅行に行くために貯めていた資金があり、それを使って大劇場公演のチケットも、会服も、お茶会も、白服も、フェアウェルパーティの申し込みもしました。
大劇場公演の半ばには、東京公演のチケットとフェアウェルパーティの申し込みもしました。
人生で初めて、ひとりで夜行バスに乗りました。
初めて好きになったタカラジェンヌです。退団公演のときのしきたりを小耳に挟んでいたし、友人がご贔屓を見送る姿を見てきたけれど、それを自分がしているのがとても不思議なきぶんでした。「いってらっしゃい」がはっきり言えたかどうか、覚えていません。
東京公演千秋楽の日、蘭寿とむさんが夜なべして作った(!)大きなラブレターを受け取ったアリスちゃんの嬉しそうな顔!
退団挨拶での晴れやかな笑顔、出待ちでの噛みしめるような笑顔。挨拶でもフェアウェルでも、「悔いはない」と笑顔で言い切ってくれたからこそ、卒業を見送ることができました。

2010年の夏。大好きなあの子がいなくなった夏。
贔屓を見送るのはほんとうにつらくてかなしくて、もういちばんの子を作るのはやめようって決めました。
この次に宝塚を観に行くまで、2年かかりました。
アリスちゃんは、卒業してからしばらくは事務所に所属し、ドラマやCM、舞台にも出演していましたが2013年11月に結婚を機に芸能界を引退しています。
数年後にOGの情報サイトでコラムを書いており、幸せな生活をしていることがわかり嬉しくて泣きました。
昨年にはクラシエのCMで踊っている姿を見ることができました。最近では鳳翔大さんのインスタに赤ちゃんと一緒の写真があがっていて、もしかしたら家族が増えたのかなぁとまた幸せになりました。

なんだか贔屓の紹介というより「わたしと贔屓」みたいになってしまいましたが笑。
わたしの贔屓は可愛くて強くて、最高にかっこいい娘役です。
「わたしたちにとってアリスちゃんは、やっぱり特別な存在で、必要な存在でした」
東京千秋楽の出のパレードで会で贈った言葉です。もう、この言葉が全て。これ以上の言葉はありません。
これ以降、どんなに可愛くて強くてかっこいい娘役さんが出てきても、わたしの永遠の贔屓はアリスちゃんでしか有り得ないのです。