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ミュージカル「ジャック・ザ・リッパー」を観たよ

【大劇場に不向きなグランドミュージカル】

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大阪公演:フェニーチェ
いや、どこだよ!!いや堺なのは分かるけどどこだよ!!
というところから始まりました。
ミュージカル「ジャック・ザ・リッパー」、日本初演はもちろん今回公演なのですが、実は日本での公演実績があります。
2012年9月、2013年11月に韓国カンパニーの来日公演がありました。大阪では公演自体はありませんでしたが"シアタービューイング"がオリックス劇場で開催されており、それを観劇していたのでついに!という気持ちが強かったです。
韓国版とても好きで日本版は嬉しかったのですが、思い出補正がかかっていることも分かっていたので「がっかりしたらどうしよう……」という不安も。
結果的には「大満足とまでは言わないけど満足しました!」という感じでした。

四階席まであるフェニーチェ堺、三階A席→一階S席→二階S席の順で観劇しました(ところで友人がS席買ったら三階席だったらしく、さすがにそれは……)
三階で観たときは音はめちゃくちゃ粒立って聴こえて圧も柔らかく、傍観しているようなイメージでした。パンチが足りないというか。あと物理的に舞台が遠い。
一階席はガツンとぶつかってきて圧が強くのめり込める感じ、二階ものめり込めるけど頭の隅に冷静な部分が残せたといった感じです。
といった三席で観て思ったのは「これ、大劇場クラスの作品じゃないな」ということ。たぶんモチーフである切り裂きジャックそのものがアングラ寄りのテーマで覗き見する感覚が面白いということ、話の展開自体は登場人物の半径5メートル以内で起こっているということがあると思う。あと脚本も基本的にコンパクト。フルオケの音楽は素晴らしかったし、役者たちの歌声も素晴らしかったけど、作品の持つ規模感としてはブリーゼとか今はなきBRAVA!とか、1,000席前後の規模の作品かなと。韓国版は映像で観てたから気が付かなかったな。

キャストでいちばん期待以上!と思ったのは木村達成ダニエルです。研究に真っ直ぐで誠実そうな研究者、恋をした煌めきに絶妙に同情を誘う寂寥感。加藤ジャックとの「俺はジャック」もめちゃくちゃ相性良かったな。
対する小野賢章ダニエルは優柔不断そうな印象が付き纏い、それも良さだとは思うんだけど個人的には今ひとつ。必死そうすぎてちょっと違うなぁ……と。
その相手役となるグロリア役のMay'nちゃんはシェリル・ノームしか聴いたことなかったのでどんなお芝居をするかな?と思っていたのですが「歌は上手いけどポップス歌手」の域を今は出ていなかったかなぁ。
あとこれは脚本もあるしわたしの感覚もあるのですが、ダニエルとグロリアが恋に落ちた過程分かりにくすぎて……わたしはロマンチストのくせに「一目惚れの恋」を信用していないので、そんな一瞬ですべてを棄ててもいいみたいな感情になるか〜!?と思っちゃう。一目惚れしたあと丁寧に愛を育んでいってくれればいいんだけど、そんな一晩共にしただけでアメリカに連れて帰ろう!ついて行こう!ってなるか……?っていう。序盤のデュエット、初回から眠くなってしまった。

ジャック役の加藤和樹堂珍嘉邦はどちらも違った趣きで面白かったです。実体のある加藤ジャックに幻想である堂珍ジャックという印象。
堂珍嘉邦CHEMISTRY時代しか知らなくて、May'nちゃんと同じくお芝居が気になっていたけどなかなかいいお芝居するんですね。特殊設定な役柄もあると思うけど。わりとハイトーンで甘い歌声のイメージだったのが、低音でドスの効いた歌声でびっくりしました。ただ「俺はジャック」で何度も入れ替わるところはちょっと中途半端に感じたのでそのへんは加藤和樹との経験値の差かな〜

アンダーソン役も違う趣きで面白かったな。真面目で繊細そうで傷付いてます!!!!!って感じの松下アンダーソンと、同じく真面目で繊細そうなんだけどひとりで闇を抱える加藤アンダーソンという印象でした。加藤アンダーソンのほうが好きだったけどこれはもう完全に好みの問題です。シングルキャストでも絶対満足できるくらいにアンダーソン役には文句ないです。
ところで幕開きとラストの火を点けるシーン、松下アンダーソンはなんとか煙草に火を点ける→原稿に火を点ける だったのですが、加藤アンダーソンは煙草に火が点かない→原稿に火を点ける→その火で煙草に火を点ける で、大好きすぎて大興奮しちゃったな……あとコカインの吸い方最高すぎて大興奮すぎました。最高。
関係ないけど観劇当日にねほぱほの「女子刑務所にいた人」回を見ていたんだけど、「同部屋に殺人で収監されている人がいた "知ってる?腸ってほんとに長いんだよ〜出しても出しても出てくるの〜"って話してた」的なくだりがあったので、腸を引き摺り出すシーンで必要以上にグロく感じてしまって疲れた……

エリアンナさん、リビミュで観て以来だったのですが、歌は文句なしに上手い!が、ポリーとしてはブレてない!?って思っちゃった。荒れた生活をしている娼婦の顔と、終盤のアンダーソンとのふたりのシーンが悪い意味で別人すぎる。せっかくエリアンナさんをキャスティングするならあのシーンは高い声で「雪だわ!」ってキャッキャさせるべきではなかったと思います。大人なふたりが見たかったなぁ。
というか、この作品にこんなにラブロマンスいるかぁ??と思ったのが正直な感想。ダニエルとグロリアだけでお腹いっぱいなんですけど。あとこのふたり会話してなさすぎてイライラしてしまったwwwアンダーソンも早よ話せやだしポリーも自分のことばっかりじゃなくてアンダーソンの話も聞け!!

まりおのモンローは新境地を見せてくれて楽しかった!
韓国版モンローは日本でいうと光石研さんみたいな役者さんが演じていたのでまりおが発表されたとき相当若いな〜と思っていたのですが、アンダーソンと年齢が近いことで対になってる感じが出ていてよかったな。
特ダネを追い掛ける姿とお金の亡者の印象が強いけれど、"切り裂きジャック"という存在にいちばん囚われていたのはモンローかもしれませんね。偶像を追い求めすぎて実体を見付けてしまったのかも、と思えるモンローでした。あと娼婦の遺体を嬉々として撮るのはやっぱりクズ。いい田代万里生だった……。
そういえば二眼レフ可愛いしお衣装にも合っててよかったんだけど、下のレンズからストロボが光るのはちょっとよく分からんかった。そこはレンズですよ
シャッター切る瞬間はちゃんと脇を締めていたのはさすがカメラが趣味の人だ……ってなりました。

東京公演からみんな言ってたけど舞台美術は面白かったな〜歪んだロンドン、を表しているのかな。あと新聞紙が散らばったままずっと舞台上にあるの、混沌が表れているようで好きでした。
下手側が三階で観て感じたよりもだいぶ傾いてたのはびっくりした。あそこで芝居するの大変やったろうな〜
モンロータイムズで裏側が紹介されていたミニチュアの街並み

可愛いんだけど小さすぎて、舞台上に置かれるとよく分からないものになっちゃってたの残念だったなぁ。でも可愛いからダイカットマステがあったら絶対買ってた……。

初見が若いころだったし思い出補正もかかってたけど、脚本も臓器の扱い方もえらい雑だったな〜と今さらながら思いましたが、まぁまぁツッコミながらも面白かったな。と満足しました。
再演あったら観たいキャスト選んで観に行くと思います。やっぱり音楽とかは好きなので!って感じです。

配信あります!みんな観てくれよな!

2021.10.09. 12時30分 / 17時
2021.10.10. 12時30分(大千穐楽